七夕にちなんで橋渡し

こんな仕事も楽しそうですね。

科学や技術の理解を深めてもらうための「コミュニケーション」の重要性が叫ばれている。サイエンスコミュニケーションは、研究者と一般市民が互いに情報を交換し、意思疎通を図る活動を広く指す。日本が科学技術立国を掲げながら、国民の関心や理解が低いことが背景にあり、活性化に向けた動きが目立ってきた。 (大島弘義) 文部科学省は今年の科学技術白書で初めて「社会とのコミュニケーション」を取り上げ「科学技術に高い見識を備えたコミュニケーターが不足し、育成が必要」と提言した。コミュニケーターは科学ライター、博物館や科学館関係者、大学や研究機関の広報担当者、理科教師や市民団体などで、科学技術の専門家と一般市民をつなぐ役割を担う。 この数年、コミュニケーターの育成や新しいコミュニケーションの取り組みが始まっている。 七月で開館から三年となる日本科学未来館(東京都江東区)では「科学技術スペシャリスト」と呼ぶ二十人がコミュニケーターとして展示や行催事の企画を担当する。スペシャリストには博士号を持ち、研究者としてキャリアを積んできた人も多い。 美馬のゆり副館長は「任期は最長で五年。ここで培った力を、他の施設や小中高校の教壇で、あるいは大型研究プロジェクトの広報担当者などとして、広く生かしてほしい」と話す。今後、コミュニケーター人材の養成機関としての役割を強化したいという。    ◇ 市民レベルでは昨年十二月「サイエンス・コミュニケーション」という民間非営利団体NPO)が設立。科学技術に関するニュースをまとめたメールマガジンの発行や、理工系大学院への進学ガイドの作成を進める。 科学の本の読み聞かせと実験を通して、その面白さを幼稚園児や小学生らに伝えるグループもある。二〇〇二年に発足した「ほんとほんと」は東京都東久留米市の図書館などで活動。代表の吉田のりまきさんは「科学は何歳からでも始められる。その土台になれば」と話す。コミュニケーションは「自分の意見を持ち、相手の意見を聞くことがその基本。国語の問題も大きい」と感じる。    ◇ コミュニケーションのあり方を研究する大学院も出てきた。京都大大学院生命科学研究科は本年度、生命文化学講座を新設。コミュニケーションや、社会とのかかわりが大きい生命倫理の研究を行う。加藤和助教授は「研究者がコミュニケーションにどうかかわるべきかを模索したい。社会を意識して研究するようになれば」と期待する。 文科省科学技術政策研究所が昨年まとめた報告書では、科学技術への理解は、個人レベルでも健康管理につながったり、“インチキ”科学にだまされなくなることにつながる、とした。同研究所の渡辺政隆さんは「日本では一般の人の関心が低いことがなぜ危機か、ということから議論する必要がある。科学者や技術者ももっと危機感を感じてほしい」と話す。