また先走りの新聞タイトル

和泉教授らは、ラットの脳から取り出した神経細胞を、タミフルと、タミフルが体の中で分解された時にできる薬効成分のOCBという化学物質の水溶液にそれぞれ浸した。すると、どちらも約10分後に神経細胞の活動が過剰に盛んになった。各薬物を洗い流した後も、40分以上神経細胞の興奮は続いた。タミフルそのものよりも、OCBの方が約30倍も作用は強かった。人間で未成年に異常行動が相次いでいるため、今回は思春期前の子どもに相当する生後1カ月の幼いラットの神経細胞を使った。

オリジナル論文→Izumi Y et al. Neuroexcitatory actions of Tamiflu and its carboxylate metabolite.Neurosci Lett. 2007 Oct 9;426(1):54-8.
asahi.comの記事です。タイトルはセンセーショナルですが、本文を読むとオヤオヤなのが見て取れます。タミフルの分解成分OCBの溶液に神経細胞を直につけたところで、生体内の脳の反応と同じかどうか不明です。もしこの神経細胞の興奮が生体内で起きていたとして、ラットと人間の薬物分解機構が同じなのか。OCB溶液の濃度が、人間における投与量と合致してるか*1。そして生後1ヶ月のラットが人間の思春期前の子どものモデルになりうるのか。
今回の研究結果は重要な示唆であることは間違いありませんが、これから即「タミフルの脳への興奮作用」が実証されたというタイトルは先走りすぎだと思う・・・ということを書いて、どれだけの人の耳に届くのだろうか。

*1:おこげを食べるとガンになるという研究も、ラットに投与された量を人間に換算するとバケツ一杯分ぐらいらしい。そんな大量なものなら何でも有害だ