問題が山積み

本開発では、DNAマイクロアレイを用いた約5万5000遺伝子の分析結果から統合失調症に関連して変動する10種類程度の遺伝子を抽出し、分類予測に優れたニューラルネットワーク注3)というアルゴリズムを活用した分類予測モデルを構築しました。専門医による統合失調症の早期診断を支援する技術として活用され、早期治療の実現によって患者の重症化回避や治癒率向上に貢献することが期待されます。

この検査技術が目指すところと社会的・医学的意義は認めます。統合失調症を発症前に診断できたら早期治療・発症予防につながりますから。しかしマイクロアレイなんて再現性の低い実験だけを診断基準にすることは反対します。
統合失調症の関連遺伝子は、未だに研究が続けられている段階です。最新号のNature Geneticsにcopy number多型と統合失調症に関する論文が出てましたが、複数のマーカーを組み合わせての診断を実際の臨床で行うには時期尚早でしょう。
最後に、統合失調症は社会的にレッテルを貼られやすい疾患なんですから、安易に早期診断を下してしまうことによって起こりうる差別をどう回避するのか。そこをクリアしないと「統合失調症の早期診断検査キット」の開発が成功しても、実用化には程遠いと思います。