遺伝子治療で視力回復

この試験は、治療の効果よりもむしろ安全性を調べるためのものだったが、その有効性があまりにも顕著だったため、研究者たちは結果を公表することにした。(中略)
2人の患者は、RPE65遺伝子に欠陥があった。この遺伝子は、正常であれば、光や色を検知する光受容細胞を覆う保護層を維持する酵素を作り出す。 Cideciyan教授のチームは、ウイルスを使って健全なRPE65遺伝子を患者の眼に送り込み、酵素の産生を活発にして、残されている光受容細胞が正常に機能できるようにした。
機能の改善はわずか1週間で始まり、研究が終了した90日後まで継続した。試験の結果、2人の患者は治療前の状態と比べて、6万3000分の1の光で物が見えるようになった。光の少ない状態に眼が慣れるまでに数時間かかるとはいえ、機能の改善には目覚しいものがある。

今回の患者の眼は、かろうじて残った少数の光受容細胞を利用していたため、小児期あるいは幼年期など早い時期に治療を行なえば、さらに大きな機能改善が見られる可能性がある。

オリジナル論文→Human gene therapy for RPE65 isomerase deficiency activates the retinoid cycle of vision but with slow rod kinetics. Cideciyan AV et al. Epub September 22, 2008, doi: 10.1073/pnas.0807027105 .
これは素晴らしい成果。ウィルスベクターを使ってRPE65遺伝子を患者の目に送り込む、という治療法ですから、安全性は十分に確認しないといけません。しかし実験段階とはいえ先天性視覚障害の患者が「目覚まし時計の光が明るすぎて背を向けないと眠れない」と言うぐらいなのですから、治療法の有用性は抜群でしょう。こういう記事を読むと研究頑張ろうって思える。
あとWIRED VISIONはオリジナル論文へのリンクをちゃんと載せてたので素晴らしいです。日本のほかのメディアも見習ってほしい。