大学院生の受け入れはストップすべき?

博士は募集停止にすべき…衝撃の提言 - 科学政策ニュースクリップ
職業としての大学教授』から刺激的な引用が並んでいます。現在の大学教員は自らの保身で精一杯。大学院は定員補充に懸命だが卒業後の進路はお粗末だから、将来的に研究者・教育者としてやっていける者以外は修士で終わらせろ、という提言らしいです。ちゃんと原著を読んでないので引用から推察していますが、多分そんなに間違ってないと思います。
著者の現状把握について異論は全くありません。大学教授を始めとした教員陣は、自分らは研究者だと思っていて、研究資金の確保と論文執筆がプライオリティの上位にあります。学生相手の講義を本分だと思ってる教授が何割いるんでしょうか・・・5%もいないんじゃないか?しかしそれは、大学職員としての採用評価が「研究実績」である以上、極めて自然なことだと思います。
この事態を改善したいのなら、文科省か大学運営側が「教員の評価に担当学生の卒業後の進路を加算する」と宣言すればいいだけでしょう。引用文に

学部卒あるいは修士修了の時点で、将来大学教員・研究者としてやっていけろだけの能力とガッツを持った者だけ選び出し、彼ら彼女らに集中的に資金を投入して、次世代の大学教員・研究者を養成する方が、博士号を持ったフリーターを量産するだけの現行大学制度よりもはるかに合理的である。

とありますが、これには疑問を覚えます。現在の院試が、その選定目的なんじゃないの?著者の潮木氏がどんな「選出方法」を考えているのかは知りませんが、100%の制度で未来の大学教員・研究者をピックアップできる術はないです。どんなに制度をあげようとしても、必ず他の進路に方向転換したり、ドロップアウトする学生が出てきます。「2割・8割の法則」ですよ。優秀な人材を育て上げるには、母数は大きく、ピラミッドの底辺は広くしたほうがいい。博士課程に進む人数を限定すればするほど、成功する「2割」の絶対数も小さくなります。日本の研究界を更に萎縮させたいなら効果的な手ですね。
結局、博士課程卒の学生の進路が不安定なアカポスに限定されているのが元凶なだけです。大学教員も企業側としっかり向き合って、自分の受け持ち学生が企業側に就職させられるぐらいのパイプを保持したほうがいいと思います。もしくは産学官連携を積極的に進めて学生を企業に派遣させるとか。つらつらと書きましたが、基礎研究分野には無理な感じですね。うーん、どうすればいいんだろう?