3倍効果

では、消費者がすでに手に入れたものに対して抱く価値は、どの程度か。次の実験も面白い。
 被験者を二つに分け、一番目のグループにマグカップを渡した後、いくらなら売るのかと質問した。二番目のグループには何も渡さず、マグカップを買ってもいい金額を質問。同じマグカップを使っているので、本来はどちらのグループも似た金額が提示されるはずだ。
 しかし、売ってもいいと答えた人の平均価格は7ドル12セントであるのに対し、買ってもいいと答えた人の平均価格は3ドル12セントだった(Kahneman, Knetsch, and Thaler 90年)。つまり消費者は、いったん入手したものの価値を最初に買うときの価値の倍以上に見積もっているわけだ。
 これを行動経済学では「保有効果」と呼び、買い手は自分が手に入れた製品やサービスの価値を約3倍に過大評価するといわれている。(中略)
 ある人やものとの接触回数が増えれば増えるほど好感度が高まる現象を「単純接触効果」と呼ぶが、この効果が開発担当者の目を曇らせる。製品開発を通して何度も当該製品に接するうちに思い入れが強くなり、顧客も同じように新製品の価値を理解してくれると思い込む可能性があるのだ。

 ハーバード大学のジョン・グルビル教授によると、結果的に売り手は自社で開発した製品やサービスの価値を3倍に過大評価するという。

現状維持バイアス」、「保有効果」、そして「単純接触効果」が人の判断力を大きく左右するそうです。渡されたマグカップを売る値段をつけるなんて、タダでもらったんだから幾らでも良さそうなのに、実に興味深いです。しかし・・・「現状維持バイアス」と「隣の芝は青い」は相反すると思うぞ。そのへんどうだろう?