健康診断の「正常値」に個人差
オリジナル論文→Genome-wide association study of hematological and biochemical traits in a Japanese population. Kamatani Y et al. Nature Genetics EPub online: 7 February 2010.
発見したのは赤血球、肝機能、腎(じん)機能、尿酸、心筋梗塞(こうそく)など18項目の血液検査に関連する新規の遺伝子。肝機能では、ALP値は遺伝子の違いにより最大99の個人差があり、ガンマGTP値などは酒に強い遺伝子を持つ人で高い傾向があった。また血液型がB型の女性は、他の血液型の人と比べて貧血のリスクが21%低いことも分かった。検査結果の目安となる「正常値」は、数値にかなり幅がある。
研究チームの松田浩一・東大医科学研究所准教授は「遺伝情報を調べることで自分の正常値を知っていれば、早めに異常に気付いたり、余計な心配をしなくて済むようになる」と話している。
東大医科研らのグループが、バイオバンクに登録された14,700人の検体から、血液検査・生化学検査でチェックする項目と遺伝子多型(SNP)との関連を調べました。その結果、特定のSNPを持った人たちは、現在「正常値」とされている範囲を外れても健康であるケースが多く見つかったそうです。
論文にザッと目を通して面白いなぁと思ったのは、既に報告のあったSNPのうち、日本人内での頻度が10%以上*1のものをヨーロッパ人での調査結果と比べると、2/3以上のもので傾向が一致した*2という点です。頻度が高いSNPは人類共通のものが多いってことでしょうか。逆に言うと、頻度が低いものは人種特有のSNPである可能性が高いとも考えられますね。
今回の調査は血液検査の項目が多いので、「ABO血液型遺伝子SNPと赤血球数、ヘモグロビン値」が関連してるという結果が出ても驚きではありません。だって血液型って赤血球の表面上の抗原タイプのことですし、人種によって血液型の割合って違いますから。しかし、メディアによっては「B型の人は血液が濃い」 とかいう書き方になってしまうのは、ちょっと問題じゃないでしょうか。血液型性格診断が大好きな日本人は「B型の女は血の気が(ry」とか間違った情報だけ信じちゃいますよ?
あとCorrespondenceのメールアドレスにプロバイダメールを使うのってアリなんか?まさかのbiglobe.ne.jpに驚愕。