「スニーカートランスファー」


 アバターは、カリフォルニアで撮影されたデータがニュージーランド(NZ)に持ち込まれて映画に仕上げられたのですが、3ペタバイトというデータをNZに運ぶのは「スニーカートランスファー」だったそうです。要は、足で運んだという意味です。

 この話題は、先月の2月11日と2月12日に東京国際フォーラムで開かれた文部科学省科学研究費特定領域研究「ゲノム」4領域の成果公開シンポジウムで、パネル討論「これからのゲノム研究」でパネリストとして登壇した東京工業大学大学院生命理工学研究科の黒川顕・生命情報専攻教授が、紹介しました。

 いわゆる次世代・超並列シーケンサーを利用したメタゲノムの研究でも知られる黒川さんは、「超高速ネットワークのインフラ作りが大切。インターゲットを介した情報伝達は困難になりつつある。ポータブルのハードディスクを宅配便で送る事態になっている。米エネルギー省は、6200万ドルの予算をつけてこの問題を解決する取り組みをすでに始めている」と話しました。(中略)

 「スニーカートランスファー」の話題に戻りますと、膨大なデータ“マッシブデータ”が産出されるようになってきた現状とその問題点については、国立遺伝学研究所の大久保公策教授らが著した「インターネット時代の公的科学の知財戦略」に、的確にまとめられています。

古くて新しい問題ですね。ほんの10年ほど前までは、色んな業界で起こってたと思うんですが、CD-Rに焼ききれない用量のデータはHDDか何かにコピーして宅急便で送ってました。今は通信網やマシンの性能が大幅にアップして大抵のものはネット回線経由でやり取りできます。
しかし次世代シークエンサーのデータは、ヒト1人分のゲノム読み取り*1だけでテラバイト単位のデータが出てしまいます。これを的確かつ安全に遠隔地に送るとなると「スニーカートランスファー」しかないのかもしれません。実際のところは、忙しい研究者がデータ転送のためだけに出向くのは非現実的ですから、他のスタッフに託すんでしょう。「究極の個人情報」であるゲノムデータなのですから、その場合の責任の在り処も明確にしておいたほうがいいと思います。ビジネス文書等だったらクーリエサービスもありますが、安易に第三者や非正規雇用者に託して欲しくはないですね。

*1:そもそもヒト遺伝情報が入ったマシンはネットから隔離されてるはずなのでネットワーク転送はありえない?