日本人初の次世代シークエンス解析


 理研チームは、超高速でDNAの塩基配列を読み解くことができる次世代シークエンサー(解析装置)を使って、典型的な日本人男性のゲノムを昨年1月から約5カ月かけて解読。2003年に国際プロジェクトで解読されたヒトゲノムの配列や欧米、アフリカ、中国、韓国人のデータと比較した。

 その結果、約30億対の塩基配列のうち、99%以上が国際プロジェクトのヒトゲノムの配列と一致したが、既存データにない約300万対の塩基配列が新たに見つかった。また、従来知られていなかった塩基の個人差が約40万個あった。

 ゲノムは究極の個人情報といわれ、近い将来、解読費用は10万円程度まで下がると予想される。日本人のゲノム特性を見いだすには最低でも数十人分のデータが必要という。

 角田達彦・理研ゲノム医科学研究センターチームリーダーは「病気のなりやすさを知るには、研究が相当進まないといけない。情報保護の体制も未整備だ。興味本位で個人のゲノムを解読しない方がよい」と話している。

オリジナル論文→Whole-genome sequencing and comprehensive variant analysis of a Japanese individual using massively parallel sequencing. Fujimoto A, et al. Nature Genetics. Epub online 24 October 2010.
日本人男性のゲノム配列を初めて次世代シークエンサーでみっちり解読した研究結果です。元々はHapMapプロジェクトで解析したサンプルの1つだそうで、今回の解読で新規のSNP、じゃなくてSNVやCNVや、DBに登録されているヒトゲノム配列(白人)にはない領域がゴッソリ見つかったそうです。たった1人でこれだけ違うということは、日本人ゲノムを数十人分も読んだら現状の認識がガラッと変わるんじゃ?

朝日新聞はどう収拾するつもりなのか


日本癌(がん)学会の野田哲生理事長と日本がん免疫学会の今井浩三理事長は、東京大学医科学研究所が開発したがんペプチドワクチンを使った付属病院の臨床試験で起きた有害事象が、ペプチドの提供先である他の医療機関に伝えられていなかったことを報じた15、16日付朝日新聞朝刊の記事への抗議声明を両学会のホームページに掲載した。「大きな事実誤認に基づいて情報をゆがめ、読者を誤った理解へと誘導する」としている。

 朝日新聞社広報部の話 記事は、薬事法の規制を受けない臨床試験には被験者保護の観点から問題があることを、医科研病院の事例を通じて指摘したものです。抗議声明はどの点が「大きな事実誤認」か具体的に言及していませんが、記事は確かな取材に基づくものです。

朝日新聞がスッパ抜きで「東大医科研の中村祐輔先生が主導で行っている多施設臨床試験で起きた重大な有害事象を、他の施設に伝えていなかった」という記事を出しました。その後の記者会見・他のマスコミの取材で、多施設じゃなくて単施設試験だったとか、中村祐輔先生は関係ない臨床試験だったとか、そもそも「重大な有害事象」と報道されたのが「膵臓がんでは自然に起こりうる事象」だったとか、もうボロボロな状況です。上記記事に出ている2学会の他に、がん患者で作る4団体も朝日新聞の勇み足記事を非難する声明をいち早く発表しています。詳細は「朝日新聞 医学研究科 膵臓ガン 中村祐輔」あたりのキーワードでググれば沢山出てきますし、医師・医療系ブログでも補足的な説明が読めるので、ココでは敢えてツッコミません。
問題は、 どうして朝日新聞がこんなに強気の記事を今出すのか、ということです。朝日新聞以外の記事を読むと、誤報としか思えないんだが・・・強気に出られる切り札があるのか、開き直ってるのか、それとも根本的なミスに気づけないほどデスクが無知なのか。どれにせよ、事態の収拾まで少しかかりそうです。