二枚鑑札について

二枚鑑札はなぜだめなのか、よくわからない。現に協会の寄付行為を見ても、どこにも明記されていない。「昭和33年に、行司と年寄の二枚鑑札が禁止されたことが、論拠になっているようだ」と協会は説明する。栃錦の場合は、横綱だったこともあって理事会で特例として承認されたらしい。琴ノ若は最高位関脇である。しかし、相撲に打ち込む真摯(しんし)な姿勢は、若い力士の立派な手本であり、横綱にも劣らぬ協会の至宝といえる。師匠の長期入院中は師匠代行としての責務もきちんと果たした。杓子(しゃくし)定規に二枚鑑札を認めず、むざむざ引退させてしまうのは、宝を自ら捨て去ることと同じではないのか。プロ野球では、29年ぶりのプレーイングマネジャー(選手兼監督)としてヤクルト・古田敦也監督が誕生し、大きな話題を呼んでいる。こちら琴ノ若も力士、師匠を兼ねる〝相撲界の古田〟として、なんとか特例で現役を続けさせてあげたい。

このコラムの日付が11月18日。その数日後に琴ノ若は涙を流しつつも引退届けを提出しました。本当に、相撲界の宝を失った気がします。