津軽の春と住もう

 津軽に暮らす人たちにとって、春の訪れは本当に待ち遠しいものです。
 私が生まれ育った鯵ケ沢町は、五能線沿線の日本海に面した港町。冬の積雪量は山形や新潟ほどではありませんが、とにかく風が強くて、寒さが厳しい。中学校へは徒歩40分かけて通っていましたが、たどり着く頃にはまゆ毛が凍りついていたものです。
 春がやってきたのはまず、匂いで感じるんです。雪が解けてぬかるんだ土が顔を出し、それが日差しで乾いてくると、土ぼこりの匂いがする風が吹く。このほこりっぽい匂い、そして、草木が芽吹いてくる青臭い匂いを嗅(か)ぐと、心がワクワクしたものです。やっと相撲ができる季節がやってきた、と。

相撲王国、津軽の春の情景。「眉毛が凍る」ほどの寒さの中を片道40分も歩く、というのも足腰の鍛錬に良さそうです。厳しい冬が終わって春が近づくと「やっと相撲ができる」と思える情熱もまた、すごい。