おめでとうございます

月明かりの道を抜け、病室に戻るとすでに真夜中過ぎだった。

「うちの嫁さん、どこっっ!?」

「第6分娩室よ、通路の奥を左に曲がってね」

その夜はかなり忙しいらしく、受付のナースも必要最小限の答えだけで、笑顔もなく別の患者の方へ行ってしまった。

隣でそれを見ていた初老のジージャンを来たおじさんも、今娘が運ばれて来たところだと言う。

まだ36週の双子だそうだ。おじさんとの会話もそこそこに嫁の待つ病室へ早歩きで立ち去ろうとすると、おじさんがニコッと一言。

「落ち着きな、あんたの役目なんて10ヶ月前にもう終わってんだ!」

最近ブログに子ども誕生をつづった名文が多いなぁ。このおじさんの一言も味があっていい。Belgian-beerさんはバイオ系民間会社に就職されてご活躍のようで、お子さんも産まれて、ますます羨ましいかぎりです。やっぱアカデミアでTenureを確保しないと妻子を養うなんて無理なんだろうなぁ。今の自分には手の届かない幸せで、まぶしい。