もらいに行く?

新型インフルエンザ「インフルエンザA(H1N1)」がパンデミック(世界的流行)の一歩手前といった感で広まっているが、これまでに新型に感染した人は、今後このウイルスがより致死性の高い型に変異した場合も、すでに免疫があるために感染せずにすむかもしれないと、科学者らが指摘した。

 こうした現象は、1918年にスペインかぜが世界的に大流行した際にみられたという。この年、春により軽い春かぜにかかった人は、強度の致死性をもつスペインかぜが数か月後に猛威を振るい、世界で少なくとも4000万人が死亡した際、最初のかぜが実質的に予防接種の役割を果たしていたことが、最近の研究で明らかになっている。
 
 前年11月に感染症専門誌「Journal of Infectious Diseases」に発表された研究では、スペインかぜに第一波で感染した人は、その時に感染しなかった人に比べ、死亡率が70%低かった。この結果から、今回の新型インフルエンザでも、感染を徹底的に避けてまわったほうが、後の死亡率抑制につながらないかもしれない、という可能性が示唆される。

 同研究を行った米ジョージワシントン大学George Washington University)の伝染病学者、ローン・シモンセン(Lone Simonsen)氏は「1918年の場合、現在われわれが持てる判断力から考えると、ウイルスの毒性がまだ弱かった最初の一波の感染を許したほうが、免疫力をつける上で良かったはずだ」と語る。

 約1世紀前にパンデミックを引き起こしたスペインかぜの初期段階と同様、今回の「インフルエンザA(H1N1)」もこれまでのところ、感染範囲は広いが死亡例は少ない。

 世界保健機構(WHO)によると、「インフルエンザA(H1N1)」は過去2週間で23か国に広がり、1500人以上に感染、感染者の90%は北米地域にいる。これまで亡くなったことが報告されているメキシコの42人のうち、健康な若者が半数を占めているパターンも、スペインかぜの時と状況が似ているという。

「1918年と似たシナリオだとしたら、より『人に優しい』最初の一波を抑制したくはない、という気持ちはある」と共同研究者である米国立衛生研究所(US National Institutes of Health、NIH)のCecile Viboud氏も言う。

 しかし2人の研究者とも、自分たちの発見を政策に転換することは困難だろうという点で一致している。シモンセン氏はAFPの電話取材に「過去は過去、いまはいまだ。第2波があるのかも、それがどれだけ深刻なものになるかも分からない。現在行われている抑制策も有効かもしれない」と答えた。Viboud氏もAFPのEメール・インタビューに「新しいインフルエンザ・ウイルスの環境適応の過程について、われわれが知っていることは十分でない」と回答した。

あまりのことに全文引用。今回のインフルエンザ特徴として、60歳以上の患者が極端に少ないことは指摘されています。これは60〜65年前に今回のH1N1と類似したウィルスに感染して免疫を獲得した可能性アリってことなんですが、1918年のスペインかぜも似たような初期経過を辿っていたとは知りませんでした。そのときは初期段階でウィルス毒性が低いうちに感染した人たちが、結果的に命拾いしたことになります。
じゃあ2009年の新型インフルエンザも「今のうちに罹ったほうがいい?」と頭をよぎりますが、それはさすがにないんじゃないかなぁ。徐々にではありますがワクチンも生産されつつあるし、1918年と比較して医療の質は飛躍的に進歩してますから。似たような話でおたふく風邪も貰いに行ったほうがいいか、ってのもありますが、一番冷静な回答は「きちんと予防接種をすれば根絶できるのに貰いに行くなんて!」です。むしろ感染例が増えるごとにウィルスが変異する確率も高まる分だけリスクが高いと考えます。現時点で封じ込められれば21世紀の人類の勝利でしょう。