遠くのヨーロッパ人より近くのアフリカ人


Researchers sequenced the complete genomes of five southern Africans over the age of 80 -- Archbishop Desmond Tutu from South Africa and four Bushmen from Namibia.
"On average we found as many genetic differences between two Bushmen than between a European and an Asian," said Dr. Vanessa Haye
s of the University of New South Wales in Australia, who worked on the study reported in Thursday's issue of the journal Nature.
オリジナル論文→Complete Khoisan and Bantu genomes from southern Africa. Stephan C. Schuster et al. Nature 463(7283), 943-947 (18 February 2010).
アフリカ・ナミブ砂漠周辺の狩猟採集民族(ブッシュマン)部族の最長老*1たち5名の全ゲノムを解読した、恐ろしい論文が出てました。使用したプラットフォームだけでも

  • Roche/454
  • Applied Biosystems’ short-read technology
  • SOLiD 3.0
  • Illumina
  • TaqMan
  • Sanger sequencing

と、どんだけ予算があるんだか(汗)その結果、偽陽性=0.0009、偽陰性=0.09という高精度な配列情報をゲットし、色々と興味深い結果が提示されています。現在の遺伝子多型解析の手順は、最初に解読された(恐らく白人と考えられている)ヒトゲノムを定規として比較し、一塩基単位で異なる部分を「多型」(SNP)と読んでいるのですが、最長老たちは他のどんな民族にも見つからなかった新規SNPを75万個近く持っていたそうです。まぁそりゃ民族が違えば当然かと思うかもしれませんが、2人のブッシュマンの遺伝的相違は、ヨーロッパ人<->アジア人間の違いより大きかったとか。それって・・・もう民族の概念を吹っ飛ばすぐらいですよね。さすが母なる大地の民だ。
そのナミビア部族長老の新規SNPなんですが、全体の87%はチンパンジーSNPと一致したそうです。全ゲノム配列の一致割合がわずか6%であることを考えると、驚異的な保全ペースではありますが、その中でブッシュマン家系に伝わっていったのはごく一部とのこと。これが何を指し示すのか、興味が募りますね。
あとFigure 3に、17番染色体における民族(および全ゲノムデータが公開されている個人)の変異グラフが載っています。確かにブッシュマンのSNPレートは高いのですが・・・それ以上にワトソンがすげぇ!何だこの圧倒的なSNPレートは?! 17q21.3に天才遺伝子でもあるっていうのか・・・?
最後に懸念なのですが、この論文では比較をするために、個人でゲノム配列が特定されている民族データが使われてます。ワトソン、ベンダーくらいは当然だとしても、1000人ゲノムで解読された中国人と韓国人データもバッチリ使われてるわけです。対して日本人は、一文字も、出てきません・・・ヒトゲノム解析での日本外しは完了したようです。トホホ。

*1:あの過酷な環境で80歳まで生きてるって時点でスーパー爺ちゃんたちでもあるが