安かろう悪かろう


 「モノが安いのはいいことだ」とばかりに、低価格路線を取る企業が増えています。しかし私は大反対です。価値ある商品を作っているなら、ふさわしい価格があるべきです。(中略)

 花王は、家庭用洗剤の「アタック」のPB商品はやりません。「300円を200円にしてもらえるなら、数量を保証するから作りませんか」と言われても絶対にやらない。アタックは、マネが難しい「鼻薬」のような技術が入っているから、価格が高くても売れるのですが、それを入れなくていいので安くしてほしいと言う。

花王がPBを手がけない理由は、利益が確保できないと研究開発への投資が細り、イノベーション(技術革新)が起こせなくなるからです。
米国のスーパーにはPB商品が多いのですが、世の中をびっくりさせるようなイノベーションが、消費財や食品の分野で生まれているのでしょうか。世界を変えるような発想や技術が入った商品は極めて少ないような印象があります。安売り路線をひたすら追求すると、メーカーは十分な開発投資ができなくなるという悪循環に陥ります。

 スーパーの強い販売力に頼って、「ほどほどの商品を作ればいい」となると、メーカーの開発力がなくなる。人々の生活をよくするようなイノベーションが起きなくなる。これは消費者にとっても、不幸なことだと思います。

 「安いことはいいことだ」だけでは、いずれその国はダメになる。もちろん過分な利益を求めているのではありません。再投資できるような適切な利益を確保することが、メーカーにとっても消費者にとっても重要だと考えています。

アタックを作った人の言葉は重みがありますね。10年ほど続いてる不況下で、消費者がより安い商品を選ぶ傾向がすっかり定着しました。100円ショップの台頭はすごかったなぁ。あの時に、上記のようなモノを創作しようとするメーカーの大多数は潰れたか方向転換を強いられたんじゃないでしょうか。
しかし今は「安いのもいいが自分がこだわる部分は少し贅沢」という風潮に変わりつつあります。別の言葉でいうと「消費者が安物に飽きた」とも考えられますが。そうなったときに、多少価格は高くても欲しいと思える、そんな魅力のある商品を作り出せる開発力を維持できているメーカーはそんなに多くないかもしれません。その責任は、デフレ下でメーカーを育てようとしなかった消費者にもあると思います。子どものころ親に「安かろう悪かろう」「安物買いの銭失い」と言われたのを、ふと思い出してみたり。