匙加減が難しい


 「御匙」,「さじ加減」,「さじを投げる」など,食事の道具としてだけでなく医学・薬学でも身近な存在とされるスプーン。しかし,投薬に用いるのは不適切なようだ。(中略)「スプーン1杯」が思わぬ事故につながる可能性もMatthew E. Falagas氏らは指摘している。
オリジナル論文→Inaccuracies in dosing drugs with teaspoons and tablespoons. M. E. Falagas ME et al. International Journal of Clinical Practice. 13 Jul 2010. 64(9):1185 - 1189.
ギリシャの一般家庭25軒にあるティースプーン、テーブルスプーンを片っ端から集めて、容量を計測した研究です。さらにその家の主婦らには実際に計量スプーンを用い、水とシロップを計った容量も調べたそうです。うーん、学生研究じゃなくて論文に掲載されるのか(苦笑)
実際の結果は、「ティースプーン」の容量が2.5〜7.3 mlだったとのこと。そりゃ、家で使ってるスプーンなんて色んな大きさがあるから当たり前のことです。ところが、計量スプーンで水を計ってもらっても同じぐらいの幅があったとか。同じようにシロップを計ってもらうと容量の幅が狭まったことから、水だとキリキリいっぱいに入れたときに溢しそうだから少なめに入れる傾向がある、と考察に書いてありました。
さて、こんな論文がなぜ学術雑誌に掲載されているかというと、小児向けの薬の服薬量が「小さじ一杯」などと書かれていることが多いからです。薬に専用スプーンを添付しても、親ってのは家のスプーンを使い勝ちだとか。そうすると、計算された容量より多め/少なめな薬を与えることになり、思わぬ事故につながります。実際に「ティスプーン」と指示があったのに、親が大きめのスプーンで毎日与えたために中毒症状を起こした幼児も報告されてます。匙加減って本当に難しいですね。