大人の階段 遠のく


A cover of The New Yorker last spring picked up on the zeitgeist: a young man hangs up his new Ph.D. in his boyhood bedroom, the cardboard box at his feet signaling his plans to move back home now that he’s officially overqualified for a job. In the doorway stand his parents, their expressions a mix of resignation, worry, annoyance and perplexity: how exactly did this happen? ....
The 20s are a black box, and there is a lot of churning in there. One-third of people in their 20s move to a new residence every year. Forty percent move back home with their parents at least once. They go through an average of seven jobs in their 20s, more job changes than in any other stretch. Two-thirds spend at least some time living with a romantic partner without being married. And marriage occurs later than ever. The median age at first marriage in the early 1970s, when the baby boomers were young, was 21 for women and 23 for men; by 2009 it had climbed to 26 for women and 28 for men, five years in a little more than a generation.
バブル崩壊後の日本ではニート、引きこもり、就職難が社会問題になっていますが、アメリカではここ10年でEmerging Adulthoodが社会現象になっています。上の引用文はNew York Timesの記事の冒頭部分であり、本文はこの10倍くらいありますが、とても読み応えがあるので興味がある方は是非ご一読ください。NYTのサイトは単語をハイライトしたら辞書検索できるので本当に親切で読みやすいです。
アメリカの20代の若者は、実家を出たり戻ったり引越ししたり、20台のうちに平均7つの職についたりするそうです。動きが激しいというと聞こえはいいですが、安定からは程遠いですね。少し前の社会学では「青年期」が18歳まで、それ以降を「成人期」と定義していましたが、現代社会ではこの2つの間に"Emerging Adulthood"(直訳すると「成人到達期」?日本語的には「半人前期」がしっくりする)があるとArnett博士は提唱しています。そりゃそうだ、19歳で一人前だと思える奴の方が圧倒的少数だって。大卒だったら、就職後2〜3年後だって一人前とは呼ばれないですよね。
20代が不安定なのは日本も同じですが、アメリカ特有だと思ったのは「退屈な職業についたり、手ひどい離婚をしたり、反抗的な子どもを持つような未来が我が身に降りかかるとは思わず、Emerging Adulthoodの96%は『将来的に自分が思い描くような人生を送ると確信してる』という項目にYesと答える」という超楽観的な人生観です。日本は全世代を通じて悲観的で、特に20代は失望と諦観の世代ですからね。アメリカと日本と、どちらの人生観が正解かはわかりませんが。
なお、アメリカで18〜21歳の子を持つ親は、平均で世帯収入の10%を子育てに費やすという結果がのっていました。これは収入額には左右されないそうですので、富裕層の子息は金銭面だけでも相当優遇されていることがわかります。10%ってすげぇなぁ・・・と思ったんですが、日本で大学生の子どもへの仕送り額は平均で約8万円で学費も含めたら年収の20%はいってるんじゃないでしょうか?子育てって本当に大変だ。
ちなみに、アメリカで親と同居してる青年以上成人未満のことをTwixterと呼ぶそうです。日本のパラサイトシングルとほぼ同義らしく、イタリアのbamboccioniやドイツのNesthockerに並ぶ存在なのかもしれません。あ、イギリスのNEETもあったか。そう考えるとEmerging Adulthoodは、先進国共通の社会現象なんでしょう。
オリジナル論文(ただし上のNYTの方がオススメ)→Emerging Adulthood - A Theory of Development From the Late Teens Through the Twenties. Arnett JJ. American Psychologist. May 2000: 55(5);469-480.