Aiの実用化へ向けて

   
 救急医療と死因究明をテーマにしたシンポジウムが10月9日、東京都内で開かれ、医師やジャーナリスト、弁護士ら合わせて8人が、それぞれの立場から死因究明の現状などについて講演した。その後のディスカッションでは、死亡時画像診断(Ai)を主導するのは臨床側か、それとも法医側かについて、さまざまな意見が上がった。(中略)
 ディスカッションでは、座長を務めた埼玉医科大川越医療センターの堤晴彦氏が、Aiや薬毒物の分析を臨床側、法医側のどちらが主導すべきかについて問題提起。「もし法医側に置いてしまったら、われわれ臨床側にデータは来ない。個人的には臨床側に置くべきだと思う」と述べた。
 これに対し慶大法医学教室の藤田眞幸氏は、「臨床側に置いて、そこで片付けられてしまうのが一番怖い」とした上で、「臨床で行う場合は、『絶対大丈夫』『どうか分からない』『絶対おかしい』とグレーディングをして、少し多めに(遺体を)法医に回していただきたい。犯罪を疑う目は、臨床医の患者を信じる目とかなり違うので、法医と臨床が共同してやるのが一番望ましいと思う」と述べた。また、費用については「Aiの場合、医療過誤を常に疑われるような風潮にすれば、病院は無料で(画像を)撮らざるを得なくなる。保険点数を与えれば、病院は喜んで撮る。いずれにしても、本当に重要だと思っているなら、国が予算を出すべきだ」と強調した。
 北大病院先進急性期医療センターの久保田信彦氏はAiについて、「厚生労働省、ひいては病院、その中でも放射線科に置かれるべきだと思う」と述べた。一方、福岡大病院救命救急センターの杉村朋子氏は、「法医でも救急でもなく、できれば別の機関をつくってほしい」と要望した。
 ディスカッションでは、死因究明の目的も論点になり、現場の救急医からは、公衆衛生学の観点から死因を突き詰める必要性や、患者の家族に説明する義務が指摘された。一方、犯罪の見逃し防止について藤田氏は、「医学的に死因を究明しても、犯罪性は分からない」と主張。これに対し、放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAi情報研究推進室の海堂尊氏は、「犯罪性(の確認)は医者がやることではない。『これが医学で分かる死因だ』と明瞭な境界線を引かないと、責任を押し付けられてしまうのではないか」と指摘した。
2006年に発表された『チーム・バチスタの栄光』で一躍有名になった死亡時画像診断(Ai)。それからわずか4年で、学会で実際の運用について議論されるまでになるとは・・・現場導入へ着々と進んでいるようで驚いています。実運用するとなると、発生する利権・責任も大きいだけに、病院内のどの科が担当するのかが焦点になるんですね。今までは特定の大学病院にある法医学部が細々とやっていたことが、一定規模以上の病院にAiとして導入されるんですから、きっと様々なハードルがあるとは思います。でもAiが導入されたら、医療過誤を疑われそうな医師も、疑問を抱きがちな患者・家族側もメリットがあるはず。
ところで「放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAi情報研究推進室の海堂尊氏」って、チーム・バチスタの著者の?作家活動と平行して活動されてるんでしょうか。