これぞ研究者魂


東京大大気海洋研究所と独立行政法人水産総合研究センターの研究チームが、天然のニホンウナギの卵を採集することに初めて成功した。場所は、日本の南約2200キロのグアム島西側にある西マリアナ海嶺(かいれい)付近。亜種も含め19種いる天然ウナギでは初の快挙で、産卵の時期と位置も特定し、謎の多かったウナギの生態解明が一気に進みそうだ。(中略)
 温帯のウナギは川や湖で成長した後、数千キロ移動して外洋で産卵するが、回遊ルートや厳密な産卵場所は不明だった。
 東京大のチームは、91年までに採集したウナギの仔魚(しぎょ)(ふ化直後で稚魚の前段階)の採集記録や誕生後の日数を、海流や海底地形とともに解析。産卵は各月の新月の数日前、同海嶺の海底にそびえる海山が連なる領域で、一斉に起こるとの仮説を立てた。

 05年にはふ化後2日目の仔魚を採集、さらに08年には同研究センターが産卵後の親ウナギを初めて捕獲し、仮説をほぼ裏付けた。

 08年から共同で研究航海を始め、新月2日前の09年5月22日未明、直径約1.6ミリの卵31個を採集した。遺伝子解析でニホンウナギの卵であることを確認したほか、付近で産卵直後の親ウナギも捕獲した。

 採集場所は、水深が3000〜4000メートルあり、二つの海水がぶつかって塩分濃度が変化する約10キロ四方とごく狭い海域。卵は水深200メートル前後にあったとみられる。チームの塚本勝巳・東京大教授は「卵がふ化するまでの日数はわずか1.5日。採集できたのは幸運だった」と話す。

オリジナル論文→Oceanic spawning ecology of freshwater eels in the western North Pacific. Tsukamoto K, et al. Nature Communications. Epub online 01 February 2011.
天然ウナギの卵が採取されたというニュース、それだけだったら「おぉ、ついに」と思うだけでした。しかし、この毎日新聞の記事では、ウナギ産卵の謎を38年間も追い続けた塚本教授の研究をうまく書いていると思います。ウナギの産卵場所は100年前に大まかな場所が分かっていたそうですが、それを「新月の夜から1.5日で孵化する卵」を実際に見つけるとなると途方もない困難と苦労があったでしょう。それでも研究者として地道に追い続けたんですから、本当に素晴らしい成果だと思います。