自動車事故と持病


 捜査関係者によると、柴田容疑者は「てんかんの持病があるが、この日は発作を抑える薬を飲み忘れていた」と供述。また、事故直前にハンドルに突っ伏し、事故後もしばらく車内で動かないでいる姿が目撃されており、県警は発作を起こし、意識を失っていた可能性もあるとみている。

栃木県の小学生死亡事故で、事故を起こした運転手は居眠り運転と報道されてました。会社を出発して3分後に登校児童の列に突っ込んでるのに、居眠り事故とは・・・ と疑問を感じてたら、居眠りではなく持病(てんかん)の薬の飲み忘れだそうです。なんと同容疑者は3年前も登校児童を巻き込んで民家に突っ込む事故を起こし、執行猶予期間中とのこと。そのときは「前日夜遊びしてて寝てなく、居眠りしてた」と話してたそうですが、裁判でてんかんの持病は争点にならなかったんでしょうか。そうしたら、今回6人もの小学生が犠牲になることは、なかったかもしれないのに。
ところで、今回の事故を機に「てんかん患者に免許を与えるなんて!」とヒステリックな反応が世論になることを恐れます。日本のてんかんの75歳までの累積発病率は3%、つまり34人に1人は生涯1度は発症する計算です。学校のクラスメイトの中の1人くらいの割合でしょうか。それだけ沢山の人がかかる病気なのに、運転免許を一律に取得禁止にしたら、その人たちはどうやって生活していくんでしょうか?都市部を除いたら、自家用車がなければ生活できないのに。
現在の法律ではてんかんをもつ人の運転免許の取得、更新には「継続的に診察している主治医」の診断書または「日本てんかん学会認定医(臨床専門医)または認定医(臨床専門医)に準ずる医師」による臨時適性検査を受ける義務があります。今回の事故の柴田容疑者は薬の飲み忘れということで論外ですが、他のてんかん患者による自動車事故では医師の指導どおりに薬を服用し、運転を控えるよう指示もされてないとして「どういう条件がそろえばてんかん患者は運転を控えるべきなのか、法廷で問いたい」と裁判が行われています。この争点は非常に重要で、もし「てんかん患者は無条件で運転を控えるべきだった」という判決が下ったら、他の疾患にも適用される可能性があります。聴覚障害者、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病・・・ あなたは大丈夫ですか?あなたの家族は? これらの患者を合わせると日本人口の10%は超えますが、彼・彼女らが運転免許を剥奪されたら、どうやって日常生活を続けられるんでしょうか。治療のための通院も難しくなります。今回の登校児童死亡事故は痛ましい事例ですが、このケースと真面目に治療を続けてる人たちとが混同されないように祈ります。
【追記】
やはり、てんかんに対する偏見は根深いようです。とはいえ、てんかんを隠して大型車の運転をしたらイカンと思う。
てんかん(2)偏見解消へNPO設立