「効率」と「非現実的な夢想家」

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上) (下)
6月9日にスペインのカタルーニャ国際賞授賞式で、村上春樹さんが受賞スピーチを行ったそうです。そうだ、村上さんに聞いてみたいというエントリを書いたのが震災1ヶ月後で、実際に村上さんの言葉を目にできたのが震災3ヶ月後でした。やっぱり、しばしの沈黙がありましたね。
上に掲載された文章は会場に配られたスピーチの全文とのことですので、実際に現場で村上さんの口から出た言葉とは少しニュアンスが異なるのかもしれません。しかし、この文章を読む限りは、村上さんは随分と変わったなぁ、という印象を受けました。デビュー当時のデタッチメントからコミットメントへの推移が、より一層進んだような。イスラエルの「壁と卵」では、まだ村上さんらしい言い回しがあったのに、今回のスピーチは(冒頭のキス以外)その余裕さえなかったのか、ワザと省いたのか、村上色が見えにくいです。まぁ今回は、自国の悲劇にして自分らも加害者なので、仕方ないのかもしれません。
しかし「非現実的な夢想家」に関しては…ジョン・レノンのImagine?って思ってしまいました。いや、いいんですよ。村上さんは営利企業じゃないから「効率」にNoを唱えるのは。そうじゃなくて、日本社会や日本人が「効率」にNoを言うのは、相当に難しいでしょう。長いものに巻かれまくりで、既成事実に滅法弱いんですから。貧困国における搾取労働に対してNoを唱えフェアトレードを確立できた欧米社会と、日本は、だいぶ違いますよね。原発事故で痛いめにあって、日本は変われるのかもしれませんし、やっぱり変われないのかもしれません。そこら辺が、村上さんの次回作のテーマになるのかも?