盲腸に焦りは禁物?

Effect of Delay to Operation on Outcomes in Adults With Acute Appendicitis. Ingraham AM, et al. Archivs of Surgery. 2010;145(9):886-892.
アメリカで急性盲腸炎にかかった成人32,782人の予後を調査した論文です。盲腸摘出手術の適用を決めてから6時間以内に手術を受けたのが24,647人(75.2%) 、6〜12時間以内に受けたのが4,934人(15.1%) 、12時間後以降に受けたのが3,201人(9.8%)だったそうです。この3群の手術所要時間や術後入院期間、副作用・死亡率を比較しても、臨床的に優位な差は見られなかったとのこと。
この論文で重要なのは、急性盲腸炎だからって緊急手術を慌ててする必要性はないかもしれない、ということです。同誌コメントにもありますが、激務の手術医を真夜中に叩き起こして盲腸摘出手術をさせても、翌日のシフトがなくなるわけじゃありません。6時間程度であれば臨床的に差がないというのであれば、一晩ゆっくり手術医を眠らせて、翌朝に体調万全で手術してもらった方が安心というものです。それに費用も抑えられるとか。アメリカと日本では医療・保険制度が違うので一様には比べられませんが、我が国でも早晩「急性盲腸炎ですね。翌朝一番に手術を入れておきます」ってことになるのかもしれません。