AFPはどっか悪いんだろうか


アルコール依存症を防いでくれる可能性のある遺伝子変異を見つけたとする論文が19日、医学誌「Alcoholism: Clinical and Experimental Research(アルコール依存症:臨床・実験研究)」電子版に掲載された。予防治療への活用が期待できるとしている。(中略)

 遺伝子の連鎖解析および関連解析を行い、アルコールへの反応の仕方に影響を及ぼしていると思われる遺伝子領域を特定。CYP2E1と呼ばれる遺伝子変異がかかわっていることがわかった。

 CYP2E1を持っている人の10〜20%は、持っていない人よりも、グラス数杯での感覚的な酔いの度合いは高かった。

 CYP2E1は肝臓ではなく脳内にある。アルコールを代謝する酵素を持ち、フリーラジカルと呼ばれる分子を生成することで知られている。

 CYP2E1を誘導する薬が開発されれば、アルコールに一層敏感になることにより、飲み過ぎが抑制される可能性がある。

「遺伝子」と「遺伝」の違いに目を通したときは「まさかAFPが・・・?」と思ったけれど、この記事を読んだらAFPの悪症状がよくわかりました。「X染色体の染色体番号20」って迷言を編み出したTechnobahnには適わないかもしれないけれど50歩100歩、いやAFPはニュースを配信してるんだから、こっちの方が悪影響が大きいでしょう。
オリジナル論文→The Investigation into CYP2E1 in Relation to the Level of Response to Alcohol Through a Combination of Linkage and Association Analysis. Webb A, et al. Alcoholism: Clinical and Experimental Research. Epub online 19 OCT 2010.
ざっと間違いを列挙するとこんな感じ。

  • CYP2E1と呼ばれる遺伝子変異がかかわっていることがわかった
    •   CYP2E1と呼ばれる遺伝子にある変異が・・・
      →CYP2E1は遺伝子名であって変異の名称じゃない
  • CYP2E1を持っている人の10〜20%は、持っていない人よりも、グラス数杯での感覚的な酔いの度合いは高かった。
    • CYP2E1に変異を持っている人の10〜20%は・・・
      →ヒトならほぼ100%確実にCYP2E1遺伝子を持ってます。10〜20%ってことは遺伝子変異の話でしょうね
  • CYP2E1は肝臓ではなく脳内にある。アルコールを代謝する酵素を持ち、フリーラジカルと呼ばれる分子を生成することで知られている。
    • CYP2E1タンパクは肝臓ではなく脳内にある。アルコールを代謝する酵素機能を持ち・・・
      →CYP2E1遺伝子はヒトゲノムの一部として、人間の各細胞にある。CYP2E1遺伝子が発現して生成されるCYP2E1タンパクが脳内で機能するか、脳内でしか発現されないと言いたいんだろうなぁ。

英文の元記事から予備知識がない人間が和訳すると、上記のように「少しだけど致命的に単語が足りない妙ちくりんな記事」ができるんでしょう。多分。報道ステーションノーベル賞受賞者を絶句させた古館カップリングもひどかったけど、コレもひどい。両者に共通しているのは、担当者に科学的知識がない、そして、そのアウトプットをチェックする機構が機能してないってことです。日本のマスコミがこんなにも科学オンチだったとは(絶句)