ホットペッパーにあらず


世界的な情報サービス企業であるトムソン・ロイター(本社:米国ニューヨーク、日本オフィス:東京都千代田区)は、毎年恒例の、最も注目を集めた研究者("Hottest" Researchers)の調査結果を発表しました。

  • 最も注目を集めた研究者として選ばれたのは、ホットペーパーを10本発表したブロード研究所/ハーバード大学のエリック・ランダー(Eric S. Lander)氏です。研究内容は、遺伝子マッピングと肺癌を含むヒト疾患の一般療法でした。同氏が最も注目を集めた研究者に選出されるのは、今回が7度目です。
  • 今回ノミネートされた13名のうち、上記ランダー氏を含む7名が遺伝学分野からの選出です。うち3名が、アイスランドのデコード・ジェネティクス(deCODE genetics)社に所属し、統合失調症、肥満、糖尿病およびその他疾患のゲノムワイド解析の研究を発表しています。遺伝学、特にゲノミクス分野から多くの最も注目を集めた研究者が選出されるのは、昨年と同様のトレンドです。

【選出方法】
過去2年間に出版された論文のうち、直近2カ月に引用された割合が著しく高い論文を、その分野の「ホットペーパー」と呼びます。この分析により、現在もっともダイナミックに発展している研究トピックやグループを特定することができます。今回の発表は、この「ホットペーパー」としてノミネートされた論文の本数が多い論文著者をランキング形式で紹介するものです。

1年間で最も引用された論文、ホットペーパーを元に計算される「最も注目を集めた研究者」の2010年版が発表されました。日本人はランキングされず、ノミネートされた13人のうち半数以上が遺伝学分野から選ばれました。これは、間違いなく次世代型シーケンサーの発展のおかげでしょう。実際トップ1に選ばれたLander博士が率いる米Broad Instituteは2009年4月時点で47台の次世代シークエンサーを保持してます。これだけのマシンをフル回転させた結果が、ホットペーパー10報につながったんだと思います。
実際のところ、このように予算・解析力のある研究チームが発表したバルク論文を引用しないと、それ以外の研究チームが追従できるチャンスは少ないです。米Broad Instituteしかり、deCode社しかり。大御所がバンバンとデータを公開し、それ以外の研究所は「基礎データ」として追試研究を行うってのが、一番よい戦略でしょう。じゃないと、被験者のサンプル収集や次世代シークエンサーの購入が重複して、貴重な予算が無駄になりかねません。