匿名検体のゲノムバンクで名前を特定?


誰でも入手しうる1000 Genomes Project公開遺伝情報に基づいて匿名化されたDNA提供者を同定しうることが示されました。
オリジナル論文→Identifying Personal Genomes by Surname Inference. Gymrek M, et al. Science. 18 January 2013: 321-324.
日本語の要約記事を目にしただけでゾッとする話です。オリジナル論文はアブストを目にしただけですが、英語のニュース記事を読んで大体の事情はわかりました。
この研究グループは1000人ゲノムプロジェクトに登録されている匿名の男性ゲノムデータから、Y染色体上のY-STRsタンデムリピートを調査しました。そこからウェブ上にある「あなたのルーツ調べます」的なサイトで同じリピートを有してる家族を調べ上げ、最後に1000人ゲノムプロジェクトのDBに戻って年齢と居住地を照らし合わせたそうです。よくある苗字の人の方が判明しやすく、この論文では約50人の苗字を判定できたとか。50人って1000人ゲノムプロジェクトの2%ですよ…なにそれ怖い。ネット社会になると、匿名のDNAバンクでも個人を特定できるという現代のホラー話に発展しそうです。個人情報はむやみに公開しないように注意してるけれど、遺伝子検査の分まで注意しないといけなくなりそうで、さすが21世紀だと妙なところで感心してしまいました。
ところで私のような懸念を抱く人に対し、ヒトゲノムプロジェクトを引っかきまわしたCraig Venterがコメントしてます。

"My genome is all out there and I've suffered no ill effects," says Venter, who was an adviser to lawmakers behind the 2008 law. "I would actually encourage people to put more of their genetic information online."
ノーガード戦法どころか露出狂の気まであるVenterに言われたくないです。