翻訳が持つ力

しつこく村上さんのスピーチネタを続けます。ブログや増田で色んな訳が出ていて、それを読み比べるのが実に楽しいです。それぞれに長所というか得意な部分と、「あれっ、ここはそれでいいの?」って部分がありますから。
その中でも↓この下りは村上さんらしさが出ていて秀逸だと思いました。

多くの場合、「いま、実際にそこにあるもの」をそのままの形で正しく認識し、具体的に描くことは非常に困難なのです。

そういうわけで、私達は、隠れ家から真実をおびき出し、それを虚構に転換し、物語という形式に変えることで、その尻尾だけでも捕まえようとしているのです。

やみくろに追われつつ道をさぐる、もしくは暗い井戸の中で壁抜けを試みる感じが実に出ています。こういう試行錯誤を無料で読めるだけでウェブって素晴らしいです。報酬ゼロでも時間と労力を割いて翻訳に勤しむ人が何人もいるんですから、日本語が滅びるのはまだ先のことかなぁと楽観できます。